昭和50年ごろは、いわゆる「単コン」の世界では「ユニット」と言えば、プリアンプ、パワーアンプ、チューナー、チャンネルフィルターと言った程度のユニットが、細分化の最小単位と考えられていた。そしてこの頃ステレオ事業部の内部では「BUAS」と言う言葉が頭を持ち上げ始めていた。つまり「バーシック・ユニット・アンプ・システム」と言うことであり、これが「ラボラトリーシリーズ」の原点であった。しかしながらこの「BUAS構想」には紆余曲折があり遅遅としては進展しないまま、年を越し昭和51年になった。
昨年末の会議で示された松田事業部長の「2極化して徹底的にやろう」という言葉が思想的バックボーンとなり、新年の或る日、会議において「BUAS」という名称は正式に「ラボラトリーシリーズ」と決定された。その日は関東平野を北風が荒れ狂う日で、将来を暗示するような天候であった。そしてその困難とともに歳月は流れた。
そしてついに「ラボラトリーシリーズとは?」に結論が出た。即ち全体構成は「プリアンプ」、「モノラルパワーアンプ」、「SEAグラフィックイコライザー」、「FM専用チューナー」、「チャンネルフィルター」そして「プラズマレベルインジケーター」であり、それぞれのユニットは最高レベルの性能を有するものであること、従って当然プロにも使っていただけるように、大きさは「BTS標準ラック」へのマウントが可能であること、と決定されたのである。こうしてパネルサイズは5cm単位となった。

今回はこの中の「M7070」に焦点を当て、開発の流れをまとめてみました。


出展:ステレオサウンド 昭和52年10月発行 日本ビクター特集号 三井 啓氏の記事  編集:遊佐


ラボラトリーシリーズへ行き着くまでの技術の変遷

昭和49年 大容量コンデンサーとトロイダルトランスによるA・B独立電源思想で設計された「JM−S1000 同じく昭和49年 高級プリメインアンプ「JA−S20
昭和50年 ビクター初バーチカルパワーFET、角型トロイダルトランス使用の「JM−S7 昭和51年 FET、ICLイコライザー、A・B独立電源採用のプリメインアンプ「JA−S41
昭和51年 A・B独立電源、そして更にL・R独立電源採用のパワーアンプ「M3030 昭和51年 プリメインアンプ「JA−S75
昭和52年 DCアンプ構成のパワーアンプ「M−2020 昭和52年当時、電源重視の思想は極限に達し、ついにバッテリードライブの公開実験をするに到った。しかしながらこれの商品化は、あまりも問題が多く、実験レベルに留まらざるを得なかった。

昭和51年3月頃 の「BUAS」商品企画会議.。メンバーはどうやら、山村さん、太田さん、加藤さん、久次米さん、そしてデザイン担当の北村さん(順不動) のようです。

M7070のデザインコンセプトはその内容にパワーMOS FET,DCアンプ構成、スイッチングレギュレーターなどの従来にない テクノロジーを視覚的に訴えることでり、このためのデザイン担当者の工夫が随所に見られた。スケッチは12枚にのぼった。いずれもヒートシンクを前面に配置し、ガラスパネルを通して 「それが見える」こと、そしてパワーインディケーターにユニークな機構を採用することであった。


これは当時のデザイン検討会の様子。メンバーは編集子の私には好く解りませんが、山村さん?、久次米さん、北村さん、 若林さん、島袋さん?、加藤さん?、成瀬さん? どなたか記憶ありませんか?


こうして最終決定される直前の「試作モデル」で、レベル表示はガラスにLEDチップをボンディングしたと、 編集子は記憶している


そして「電源重視」の思想はついに究極の電源を目指し、スイッチングレギュレーターを搭載することになり、 その実験の結果申し分の無い特性が出ることが確認された。即ち従来電源に比較し、電圧安定度、出力特性ともに上の写真のように全く変動することが無かった。 これを名づけて「Dクラス電源」と称した。


これが発売されたモデル。時に昭和52年末であった。技術陣の「執念」と「こだわり」が作り出した最高傑作モデルの一つ。残念ながら最初のデザインコンセプトであった、「前面ヒートシンク」、「ガラスウィンド」は、技術的困難さのため実現できなかったがパワーインディケータが空中に浮くようなデザインは最後まで貫かれた。

特徴は
1パワーMOSFET使用のモノラルコンストラクション
2:電源は理想電源に近いスイッチングレギュレーターによる「Dクラス電源」勿論A・B独立電源構成
3:オームの法則に則る出力が得られる(8Ωで120W、4Ωで240W)
4:前段直結ICL、コンデンサーレス、DCアンプ構成
4:歪率は業界最高の100kHz、100W出力時0.01%以下

そして「ラボラトリーシリーズ」は、その製造工程においても、検査工程においてもベルトコンベアーでなく、 人が一台一台「手作り」の感覚で、作りそして測定検査された。



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